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辞書が伝えるアメリカ南部の郷愁
毎日向かう研究室の机の上に一冊の古い英々辞典があります。もう表紙と裏表紙は既にはがれ、Zの項目のページもとっくに無くっている代物です。背表紙にはガムテープが貼ってあります。1978年にジョージア州の小さな大学町で買ったものです。この辞典の名前はWebster英々辞典といいます。読者の方々には馴染みのある名前かもしれま
せん。
この辞典を毎日のように使います。辞典が手元に置いてあるからです。この辞典には特に思い入れがあります。それは、購入した時のことが蘇ることです。アメリカで最初に落ち着いたのが大西洋岸沿いの南部にあるStateboroという小さな町です。頃は7月で蒸し暑い最中です。ただ、夕方3時頃には、必ず雷鳴とともにスコールがやってきます。子どもたちは、近くの町営プールで泳ぎます。3時になると一時避難して再開を待ちます。ラグビーボール位の大きさのスイカとメロンがピックアップトラックで売りに来ます。それはそれは安くて美味しいものです。スイカ一個が3~5ドルくらいです。
この町にある小さな州立大学で、外国からきた30名ほどのロータリー財団奨学生と一緒に英語の訓練を受けました。わたしは、那覇東ロータリークラブから派遣された奨学生でした。2か月の英語漬けの毎日でしたが、あまり効果はあがらなかったようにです。のんびりした雰囲気だったので勉強もそこそこしかしなかったせいです。でも、今思えば、この辞典を買ったのが訓練生活の中の数少ない収穫の一つでした。
辞典は文字が大きくて見やすく、イラストも必ずページごとにあります。単語の切れ目がはっきりしていて、どこで改行のときに切るかがわかります。この単語の分割は、やがてウイスコンシン大学での論文書きに大いに役立ちます。当時は、ワープロがありませんでしたので、タイプライターでレポートを作って提出しました。このとき、単語を分割する必要がでてきます。今の英文ワープロは、自動的にこのような分割をしてくれます。英々辞典にまつわるもう一つの記憶があります。北海道大学に入ったとき英語の読解の授業がありました。その教官が「君らくらいになると英々辞典を使わないと、」という台詞を学生にしたのです。なぜか、この教官の一言が今も脳裏から離れません。最近は、「英語を使わNIGHT」という駄洒落もありますが、、
もう30年近くも使うこのWebster辞典の唯一の欠点は、新しい用語が載っていないことです。「internet」という単語はありません。携帯電話の「cellular phone」もやっぱりありません。ちなみにcellularをひいてみますと、「小さな細胞ような」という説明がります。携帯電話は小さいので、その説明は納得はできます。ともあれ、古びたこの辞典は私の生活の一部であり、これからも使い古して値ある、かけがえのない愛読書の一冊です。
投稿日2006年12月20日 12:52




