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記事掲載者:由井 堅史さん

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田植えの今、昔…

5月も半ばを過ぎ、山の緑も日を追うごとに濃さを増してきました。
ひるぜん高原を吹き渡る風もさわやかで、初夏の訪れを感じます。

ひるぜんではもうすでに田植えが終わり、水田には植えられたばかりの小さな苗が頼りなさそうに風に揺れています。農家にとって田植えは1年の米作りのスタートを飾る一大行事。今では昔ほど大変な作業ではなくなりましたが、それでも苗が育ち田植えが無事に済むと、農家はホッと一息つくことが出来るのです。ということで、今回は田植えの今と昔について書いてみたいと思います。

田植えに限らず稲刈りにしても、人の手に頼るしかない昔はいわゆる「人海戦術」。人数が多いということが必要条件でした。そのため近所や親戚でお互いに協力し合って農作業をするのが通例で、田植えが始まるとそのグループのみんなの家の田植えが終わるまで、ずーっと田植えが続くという状況でした。

私の家も親戚の田植えを手伝いに行っていたのですが、その期間は家族みんなでその親戚宅に泊まっていました。夜になると大人たちは酒を飲んで盛り上がり、子供たちは勉強なんてまったくしないでみんなで遊んで楽しかった思い出があります。

そして朝になると子供は学校へ、大人たちはまた田んぼに出かけます。子供たちは夜ふかしをして遊んだので眠そうな顔。大人は飲みすぎて二日酔いだったことでしょうね。でも二日酔いでも田んぼに出ると昔の田植えは重労働。体に残った酒もすべて流れ出すほどの汗をかいての厳しい作業であったと思います。

当時の田植えはもちろんすべてが手作業。苗代という苗床から抜き取った苗(今のものよりはかなり丈の長いものでした)をワラで束ね、それを田んぼに運んで植えていきます。数人の植え手(植える人)が一列に並んで植えているところへ、畦の上からこの苗の束を投げ込みます。

植え手の少し前方に投げて苗を「補給」していくのですが、これがなかなか難しいのです。植え手に近すぎるところに苗が着水すると、跳ね上がった泥水で植え手は泥だらけ。怒り声と笑い声が上がります。かといって植え手から遠すぎると、ぬかるんだ田の中を苗を取りに往復しなくてはならず、これもまた大変です。

植え手の前方かつ、遠からず近からずという場所に苗を次々と投げ込んでいくのは至難の技。コントロールに自身のある若者の役目です。見ているとおもしろそうなので子供の私たちもやりたいのですが、とてもそんな大事な役目はさせてもらえません。大きくなったらやりたい!と思っていたのですが、今はそんな作業はもちろんありません。今思えばあの時叱られても、一つぐらい稲束を田んぼに放り投げてみておけばよかったな…と思います。

なにはともあれ、昔の田植えはとてもキツイ作業。腰をかがめた格好でずっと下を向いて植えていくので腰にきます。当時の人達は痛い腰を伸ばしながら「田植えをする機械ができたらなあ…」という夢物語をしていました。

その頃、田を起こす耕うん機や稲を刈るバインダーはもう活躍し始めていましたが、田植えだけは人の手によらなくてはならないというのが常識で、田植え機が実用化されるなんて本気で考えている農家はいませんでした。深い泥の田んぼに入って、細くて小さな苗を植えていく機械など作るのは無理だと当時はみんな考えていたのも無理もありませんよね。

ところがニッポンの技術とメーカーの執念がついに田植え機を完成させました。みなさん今の田植え機がどうやって苗を植えているのか近くで見たことがありますか?あれってよーく見ていただくとわかりますが、後方に付いている植え付ける機械の部分は固定されたままで、積まれている苗が少しずつ左右に動いて苗を植えているんですよ。

一定の量の苗をきちんと少しずつつまみとって、ぬかるんだ田んぼに植えていく作業は正に芸術品。田んぼの中で泥だらけになってクネクネしている田植え機ですが、ニッポンの技術力が凝縮されたハイテク機械なのです。

この(夢の)田植え機のおかげで今は田植えも1日か2日もあれば済んでしまいます。腰も痛くなることもないですし、田んぼの中で泥にまみれることもありません。すっかり様変わりした田植えですが変わらない風景もあります。それは家族や親戚などが揃って休憩時にあぜ道で食べるおやつの時間です。

この時には孫や子供達もやってきて賑やかな笑い声が田んぼに響き、厳しい農作業の疲れも忘れてしまうひと時です。この先もずっと残していきたいほのぼのとした農村の風景ですね。

長くなりましたが最後に、ひるぜん地方にはこの時期タニウツギという花がたくさん咲きます。ピンクの小さい花をたくさんつけ、道端などにもよく見られます。この花をひるぜんでは昔から「田植え花」と呼んでいます。ちょうど田植えの頃に咲くのでこの呼び名が付いたのですが、今では田植えの時期昔よりかなり早くなってしまったので、田植えから一ヶ月近くたってから咲く「田植え花」になってしまっています…

写真はその田植え花。今、ひるぜんではあちこちに見られます。CIMG0143.JPG

 

 

投稿日2009年05月25日 15:39


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