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記事掲載者:由井 堅史さん

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ひるぜんのジンギスカンの誕生

このコーナーでは先回まで2回にわたってジンギスカンについて書いてきました。初回は「日本におけるジンギスカン料理の起源」について。
2回目は「ひるぜんの観光の整備について」でした。最終の第3回目にあたる今回は「どのようにしてジンギスカン料理がひるぜんに定着したか」についてです。

戦後の復興を成し遂げ、余暇を楽しめるようになってきた日本。そんな中にあってひるぜんは雄大な景観を活かしての観光を地域振興の柱にしていこうと決意したことは先回お話したところです。
そしてその当時、蒜山高原に付けられたキャッチフレーズが「西の軽井沢」。高原のイメージがよく似合っているということで付けられたものだったのでしょうが、このフレーズにあんまりピンとこないと感じている人たちもいました。

蒜山の広大な山裾に広がる牧場とのんびり草を食べる牛たち。「この牧歌的な風景は軽井沢というよりは北海道に近い…」と考えていたこの人達は北海道ではすでに名物料理になっていたジンギスカンに着目。北海道の雄大な風景に似合うジンギスカンはひるぜんでも観光客にきっと受け入れられるに違いないと思い、その提供を試みたのがジンギスカンのひるぜんへの導入のきっかけであったとされています。

さて、こうしてひるぜんでも名物料理にしようとはじめられたジンギスカン。当初はやはり北海道と同じ料理法が試みられましたが、早速ある素材の入手において壁にぶつかることになりました。それは「もやし」です。当時の北海道のジンギスカン料理は鍋の上にもやしを主体とした野菜を敷き詰め、その上にタレに漬け込んだ薄切りのマトン(成羊の肉)を並べて焼くという方法でした。

そうすると薄い肉にちょうどいい感じで火が通るとともに、野菜にも肉の旨みが浸み込んでどちらもおいしく食べられるのです。そしてもやしは火の通りが良い上に肉の下に敷けば適当なすき間ができて肉がちょうど良い具合に焼けるジンギスカンにはもってこいの野菜だったのです。

しかし当時のひるぜんではその肝心のもやしが簡単には入手できませんでした。その頃はもやし自体も今ほどポピュラーではありませんでしたし、日持ちがしないので遠くからの輸送は鮮度が落ちてしまう上にコストもかかりました。

いろいろと頭を悩ませた関係者は考えたあげく、開き直ってもやしなどの野菜を敷かずに直接鉄板で肉を焼くことに決定。当時の羊肉は現在のラム(幼羊の肉)とは違い、肉質の硬いマトン(成羊の肉)であったため、「マトンは薄く切らなくてはダメ」という「常識」をくつがえし、厚切りのマトンの直焼きに挑戦したのです。

そのために当時の北海道で主流だった(今でも北海道ではこのタイプが多いみたいですが)タレに漬け込んだ「味付けジンギスカン」ではなく、生肉を焼き、後からタレを付けて食べる「生ジンギスカン」の手法を採用。更に肉を少し厚めに切ることにより火が通りすぎるのを防ぎ、肉の旨みと直に付けるタレの旨みで食べるという手法を定着させたのです。

しかしそのためにはなんといっても肉の鮮度が大事です。流通や低温技術が今ほど普及していない当時、それでなくても臭いの出やすいマトンの調達と提供には相当の労力と努力を要したことでしょう。でもそのおかげで今でもひるぜん高原のジンギスカンは肉の厚いのが売り物。食感の良さとあふれる肉汁のおいしさはヨソのものとくらべても際立っています。

元をたどれば諸事情からその必要に迫られて国策として考案されたジンギスカン料理。それがひるぜんの地にやってきて半世紀あまりが経ちました。その間、先人たちの努力と工夫を経て蒜山の名物料理となり、観光地としてのひるぜんの発展にも大いに貢献してきました。今では多くの観光客に愛されているひるぜんで一番人気のある定番メニューです。インターネットのサイトで有名なウィキペディア百科でジンギスカンを調べると蒜山高原が全国でも有数のジンギスカン料理の提供地として紹介されています。

このように全国的にも名前が知られるほどになったひるぜんのジンギスカン。たかがジンギスカン、されどジンギスカンといったところでしょうか。多くの先人たちの努力に敬意を表するとともに感謝したいと思います。

今まで3回にわたりましてひるぜんのジンギスカンをテーマに書いてきましたこのコーナー。いかがでしたか?
ひるぜんのジンギスカンに対しての知識とイメージがちょっぴりふくらんでいただけたでしょうか。

あー、こうして書いているとジンギスカンが食べたくなってきたなー。ビールにもご飯にも合うんだなあこれが。
さあみなさんもおいしいジンギスカンを食べにひるぜんへ是非どうぞ。
ジンギスカンひとつにも歴史あり。ウンチクを語りながら食べるジンギスカンは一味も二味も違いますぞ。。。

 

 

投稿日2009年09月24日 19:05


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