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「辻本店」の道をはさんで反対側に同店が経営するレストラン「西蔵」があります。(左の写真)その名のとおり、酒造りの蔵を改造したレストランで、ここでは蔵元ならではのおいしい日本酒を飲みながら、本格料理が食べられます。お値段は少々高めですが、喫茶もやってますのでよろしかったらお気軽にどうぞ。実は私はこの地区に昔ちょっとだけ住んでいたことがあります。もう30年も前の話になりますが、ここの町並みはその頃とほとんど変わっていません。移り変わりの激しい今の世の中でこれは大変に素晴らしいことであるとともに珍しいことでもあるでしょう。地元の人々が町並みの保存に尽力されていることはもちろんですが、私が考えるには「開発しにくかった」という事情もあったのではないかと思っています。
白壁の土蔵や連子格子が並ぶ町家は本当に落ち着くたたずまいで、貴重な日本の風景です。近年はこれに草木染の「のれん」が加わり、一層情緒を高めています。こののれんは地元の染色作家の手によるもので、それぞれの店の商売に関するデザインがほどこされており、それを見て歩くのも楽しみの一つになっています。食べ物屋、みやげ物や、菓子店など、連なる古い商家の通りを歩いていくとひときわ目を引く重厚な造りの蔵が現われます。創業200年を誇る「御前酒」の蔵元・「辻本店」です。「御前酒」の名の由来は御前(殿様の前)に出される酒という意味で、殿様が愛飲していた酒ということです。 (写真は辻本店中より撮影したもの)
勝山は2万3千石の城下町です。城下町というものはどことなく品があります。やはり殿様の「お膝元」として産業の振興が図られるため繁栄します。それにお膝元とあれば、あんまり街も汚くしておくわけにいきませんから、整備されてきれいになります。その姿が現在まで残っているのが勝山の「町並み保存地区」です。ここは昭和60年、県下で最初に町並み保存地区に指定されており、それだけ価値の高い町並みと言うことができるでしょう。
渡辺邸があるのは「旦(だん)」という地区で、江戸時代にはこのあたりには100以上もの武家屋敷が並んでいたそうです。今も細い路地に沿って家々が軒を連ねており、その景観に当時の面影が少しだけ偲ばれます。「殺生石」で有名な化生寺もこの地区内にあります。この旦地区は街並み保存地区より一段高い所に位置しており、町人より武士が高い所に居を構えていたことがわかります。やっぱり昔も今も人間、人より高い所に住んだほうが気持ちがいいですものね。今でも高級住宅街は大体山沿いを上へ上へと広がっていますし、マンションも上層階の方が値が張ります。
「武家屋敷」。なんて厳かな響きでしょう。そう聞いただけで思わずその塀に囲まれた静かな邸内で送られていた格式と礼節を重んじた生活の日々が頭に浮かんできます。この渡辺邸は、はっきり言って派手なつくりでもありませんし、そう大きな建物でもありません。しかしその簡素で上品な造りがかえって「質実剛健」とでも言うべく武士道の精神を伝えています。よくある大商人の旧家のように太い柱や梁がめぐらされていたり、欄間に派手な透かし彫りがほどこされていたりして「どうだ。金ならあるゾ」といった風でなく、あくまでも『物よりも心』という点にこだわった、武家の高い精神性が伝わってきます。